ライド&ライト通信

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業績悪化の「バイク王」に拍車をかける禁断のバイク買取とは!?

「バイク王」といえば私のブログRide&Writeでも様々な話題を何度か取り上げている通り、バイク業界では誰もが知っていて、大きな影響力を持つ存在です。

そんなバイク王の業績が急激に悪化しているというニュースがこの春ごろ大きなニュースになっていました。

ニュースの内容はバイク王が1月10日に公表した2017年11月期決算が、
売上高が182億円(前期比7.4%増)
営業赤字は2.6億円(前期は5億円の赤字)
上場以来初となる2期連続の営業赤字。

これはバイク王にとって、かなりピンチなんじゃないの!?という内容です。

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同業のバイク買取業者が力をつけてきた?

これまでバイク王が掲げて来た「バイク買取専門」というビジネスモデル。
このバイク買取専門を掲げる同じビジネスモデルを起用したライバル企業の出現し、「バイク王よりも高く買取ます」というメーッセージを発信することでバイク王の買取台数が減り、赤字に転落した。なんて言っているニュース記事もありました。

バイク王のビジネスモデルを詳しく説明すると、まずはバイク買取を徹底的に行います。しかし、もちろん買取るばかりでは利益をあげることができませんよね?買取ってきたバイクを売却して利益を上げないといけません。

それじゃあバイク王はどこでバイクを売却して、利益を上げるのか?そのほとんどは業者向けのバイクオークション「JBA(ジャパンバイクオークション)」で売却されています。バイク王の株主向け資料によると、ここへ出品されたバイクの成約率は実に9割。つまり、バイクを買取ってくれば9割の確率で売却できる売り先がもう決まっているのです。

じゃあこれをマネすればバイク王と同じぐらい利益が上がるのか?
現実を見ればわかると思いますが、バイク買取でバイク王と肩を並べたり、バイク王に次いでウチの買取シェアは2位ですと言っている企業は見当たりません。
実は簡単にマネすることができないんです。

売り先であるバイクオークションJBAはバイク王の関連会社。
ということは、ここで売買される記録は全てバイク王が収集して、データ分析が可能なんです。もちろんそのデータを何に使うかといえばバイク買取価格を決める為です。

オークションでいくらで売れるかわかっていれば、買取の限界額もわかりますよね?バイク王のスタッフが査定する時に、端末を見たり、本部と電話でやりとりしているのはそのせいなんです。リアルタムのデータと照合させながら買取価格を決めているのです。バイク王以外のお店にはこのデータがありませんから、オークションに実際出品するまでいくらで売れるのかがわからない状態です。どう考えても対抗するのは難しそうですよね?

 

実は黒字で回復傾向のバイク王

実際の2017年11月期決算資料を見てみても

売上高:169億9千6百万円→182億5千2百万円
12億5千6百万円の増収、7.4%増

営業損失:-5億3百万円→-2億6千3百万円
損失は52.3%も回復しています

駐車場事業のパーク王は利益獲得が難しいと判断し、早期の内に譲渡(売却)しています。しかし「パーク王」のロゴや名前はそのままで、名鉄協商パーキング株式会社に譲渡しているので知名度は伸び続けるという、よく見ればウマいやり方です。

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売り上げが増収傾向にあって、営業損失が追いつかないのはバイク王ダイレクトショップに力を入れ始めているからでしょう。ここ1〜2年ほどで店舗の改装や新規店舗の出店も目立ちます。バイク王ダイレクトショップでの販売は買取からバイクオークションへ出品するまでの間、倉庫でバイクを寝かしておくのではなく、店頭に並べて機会があれば直接ユーザーに販売するという方法です。店頭で直接ユーザーに販売することができれば中間マージンが無くなりますから、バイク王は業者オークションで販売するよりも利益が確保でき、ユーザーは安く購入することができます。仮に店頭で売れなくても元々オークションで出品できる価格で買取ってきたバイクですからオークションで業販することで在庫リスクを抱えるようなことはありません。その為現在出ている損失は今後このバイク王ダイレクトショップの売り上げ利益によって回復し、その後利益に繋がるでしょう。

しかも、このバイク王ダイレクトショップの仕組みは自動車業界No.1のガリバーがすでに実践して利益を出している方法なのです。更にいえばバイクは自動車と比べれば市場の大きさは比べ物にならない小ささなので、この販売システムについても同業他社がマネすることは難しいでしょう。

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バイク王の業績悪化させた真犯人は?

それではなぜ?バイク王は経営の危機だと騒がれるほどの2期連続赤字となったのでしょうか?その原因の一つは『原付バイク』です。これまでバイク王は「バイクならなんでもOK!」「動かないバイクでもOK!」「とにかくご相談ください!」と徹底的に問い合わせを増やし、買取上限額を提示して査定の機会を増やすやり方をしてきました。買取ったバイクは9割の確率で利益があがるのでとにかくたくさん買う必要がありますからね。しかし、実際には出張査定で向かった結果、値段のつかないバイク、利益の出ないバイクだった場合は交通費と人件費が無駄になるわけです。そういったケースに陥りやすいのが原付バイクの買取査定。元の価格が低いので買取価格は思ってる以上に上がらず、買取を断られるケースや¥0で引き上げても利益が出ないケースもあります。しかも原付バイクは全体のシェアから見ても非常に大きな割合を占めています。こうしたお金にならない出張査定が積もりに積もって赤字を招いたのです。このことは決算説明資料後半にある「受付時の対応等を見直し、高収益車両の仕入れを強化」という対策からも読み取れます。つまり今後は受付の時点で利益を出せる見込みが低ければ無理な出張査定はしないということでしょう。

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そしてもう一つ。これはまだまだ微々たるものだとは思いますが、インターネットの普及による利益の縮小です。私のブログRide&Writeの中でもバイク王の評判を利用して高く買取してもらう方法をご紹介していますが、バイク王の買取はシステム化が進んでいるので、コツを知っておけば最大限に買取査定額を簡単につり上げることは可能です。バイク王からはじめに提示された金額から2倍になったとか10万円以上金額が上がったなどという話は実際よく聞きます。こうした体験談がネット上で広がり、利幅が減っているのも事実でしょう。

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過去の不祥事やアンチが多いのも事実

2011年1月3日、買い取り価格を比較する価格比較サイトで、実際にはバイク王1社からのみが買取価格を提示しているにもかかわらず、合計6つの買取業者が買取り価格を競争しているかのように装っていたことが発覚。こうした価格比較サイトが2サイト見つかった。これらのサイト運営は静岡県と東京都の会社2社がが経営していたが、2010年11月に朝日新聞からの問い合わせがあった後に閉鎖されています。参加していた6つの買取業者はバイク王以外の5業者もすべて、実際はバイク王(アイケイコーポレーション)社内にある自作自演事務所でした。これに対して当時、消費者庁は景品表示法に抵触する可能性があるとしています。

また、アイケイコーポレーションはその後再発防止対策として、コンプライアンスに対するチェック機能の強化を目的に法務コンプライアンス室を新設。コンプライアンスの徹底を図ると発表しています。さらに広告宣伝活動においては、ユーザー目線に立った広告宣伝活動を最優先に実施する事も発表されています。

さらには買取上限金額と買取り価格の格差、査定時の買取り価格の曖昧さ、査定後に他店で買取額が上まった事例、売却を断った時なかなか帰ってくれないなど不満の声が実際にあり、それを利用したライバル店や一括買取査定サイトへ流入させようという運営社によるネット掲示板やYahoo!知恵袋への定期的な拡大、拡散によってアンチを生み出し、バイク王のイメージを悪くしているということもあります。(最近はユーザーに定期的な投稿を指摘されるなど、バレ始めている傾向もあります。)

 

「バイク買取だけ」はもう終わり 

バイク王の中期経営計画方針の中に

バイクを売るならバイク王 → バイクのことならバイク王

というフレーズが最上部に掲げられています。これはもちろんバイク王ダイレクトショップによるバイク販売も含まれていますが、2016年11月8日のG-7ホールディングスという会社との提携が鍵を握っています。このG-7ホールディングスという会社は兵庫県神戸市に本社があって、バイクワールドというバイク用品店を運営している会社です。実はこのG-7ホールディングスという会社は車用品の最大手オートバックスと創業時代から密接な関係があり、国内外のオートバックスフランチャイズ店を展開している会社です。オートバックス以外にも業務スーパーやレストランだとその事業内容の幅は広く、店舗出店用地の確保の為不動産関連事業まで手がける徹底ぶりです。

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そんなG-7ホールディングスとの提携により、バイクワールド店内へのバイク王店舗、バイク王コンシェルジュの出店、バイク王店舗でのアフターパーツ、用品の販売、バイク業界の販売、買取の情報交換など、ユーザーのバイクライフをトータルでサポートする体制が整うことになります。

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バイク王がいきなり手を上げることはない

いろいろ騒がれたバイク王の赤字ですが、これぐらいで経営がいきなり揺らぐことはありえません。なぜなら中古バイク業界においていまや流通の中核を担っているような企業ですから、バイク王が無責任に事業をやめてしまったら業界は大混乱です。唯一影響を受けないのは完全クローズ経営のレッドバロンぐらいなものでしょう。

それからやはり、G-7ホールディングスとの提携は大きいです。この先バイク王のフランチャイズ店の出店も全く無い話ではないと私は思います。

まぁ、ニュースメディアやサイトが面白がって赤字だ!業績悪化だ!と書いている会社のほとんどが大企業なので、大した影響はないのでしょうけれど、バイク業界は全体が低迷している現在ですから、大きな会社も小さな会社もこれにめげずに頑張って欲しいと私は思います。